レガシィVZタイプRの車検が迫り、次の車を探していた時に、また珍しい車を見つけた。今はトラックメーカーになってしまったいすゞが発売した、
ジェミニ1.6イルムシャーR 4WDである。
この車、街中では少ないながら走っているのを見かけたことはあったが、それらは全てセダンタイプのイルムシャーRであった。しかし石器人が見つけたのは、滅多に走っている姿にお目にかかれないクーペタイプのイルムシャーRだったのだ。
スタイルはセダンの方が好みだったけれど、当時
レガシィVZタイプRの非力さにうんざりしていた石器人は、「ターボ」の文字に目が眩み、思わずこの車を買ってしまうことになった。
イルムシャーRのスペックなのだが、1588ccの4XE1-T(インタークーラーターボ)は最高出力が180psと、当時の1600ccターボとしては最も高い出力を出していた。車重は記憶が定かではないが1200kg前後だったと思う。
車本体の購入と同時に、いすゞのディーラーで扱っていた(いい時代だった…)ラリー用のバネとダンパーを入手し、早速組み込んだ。
実際に走らせてみると、鈍重だったレガシィVZタイプRに比べると確かに加速は勝り、
BFMR GT-Aeよりも高回転の伸びは良かった。ただ、低中速のトルクや上まで回した時の絶対的な速さは、当然乍ら
BG8Rや
パルサーGTi-Rには敵わない。1600ccターボの限界というやつだろう。4WD機構は、ちゃんとした?センターデフ方式により前後の差動制御を行う構造なのだが、前後の各デフにはビスカスLSDすら入っていなかったので、トラクションの面では不満の残る車だった。
それでも純正でレカロのシートが装着されていて、ドライビングポジションも適切だったので、操作系が軽いことも相まって街中では乗りやすかった。
で、しばらく乗っていると、コーナリング時に妙な違和感を感じるようになった。ハンドルを切ってコーナーに進入すると、途中でカクッとタイヤが内側に切れ込むような感触があるのだ。言わば「2段階コーナリング」のような感じというか…。
そこでいつもの整備工場に持ち込んで、リフトアップしてフロントのタイヤを揺すってみると、なんと右側のタイヤが数ミリ単位で「カクッ、カクッ」と動くのだ!「こりゃハブベアリングだね~」ということで、早速交換して貰うと症状は完治した。しかし、数ミリも動くガタというのは、何かに余程激しくぶつけたのだろうか?一応フロントに小修復歴は有ったのだが…。
その後しばらくは何の問題も無く乗っていたのだが、ある時エンジンオイルの量を点検していて、かなり減っていることに気付いた。排気ガスは透明で、オイルが燃えている気配はないから、オイル上がりやオイル下がりではないだろう。で、駐車位置の地面を見たら結構な量のオイルの染みがある。「ハハーン、こりゃパッキンが緩んで発生するオイル漏れじゃないか?」と思って、カムカバーやガスケット近辺をチェックするも「オイルの滲み」らしきものは確認できない。
自力での点検ではわからなかったので、いすゞのディーラーに持ち込んで診て貰ったら、「ターボのオイルライン」からのオイル漏れだった。結構な修理金額だったが、オイルラインを交換してオイル減りの症状は治まった。原因は何だったのかディーラーに確認したのだが、「詳しい原因はわからない。ただ、オイルラインが詰まってしまうと、今回の様に、ラインの外に行き場を失ったオイルが溢れ出すことがある」とのことだった。オイル交換は3000km毎にやっているのに何故詰まるんだろう…。前オーナーのオイル管理の所為なんだろうか?
気になっていたタービンへの影響だが、「ターボから異音は出ていないので、オイルラインの詰まりによる焼き付きにまでは至っていないだろう」ということで、ひとまず安堵した。
修理後は、オイルラインに特に問題も発生せず乗り続けていた。そんなある日、クラブからの誘いで、
AE86トレノ時代にダートトライアルでよく走っていた「オートスポーツランド砂川」で行われる練習走行会に参加することになった。その時でも、ジェミニにはラリー用の足回りは組んでいたが、ガード類などは装着していなかった。あまり無理は出来ないな、とは思ったのだが、何せ日本でも屈指と言われる高速ダートコースでの練習会なので、ついつい思い切り走ってしまうことになってしまった。
で、そこで痛感したのがやはり「トラクション不足」だった。高速コースで路面も結構緩かったので、ステアリングの切り込みやブレーキング等のきっかけで姿勢は簡単に変えられるのだが、前後共にオープンデフなので、コーナーの立ち上がりに時間がかかるのだ。但し長い直線からコーナーに進入する時は、上手く加速してやれば直線区間で相当スピードに乗せることは出来たので、高速からのブレーキングのいい練習にはなった。
そんな塩梅で調子に乗って走っている内に、リヤから「カタカタ」と異音が鳴り出した。嫌な予感がして駐車場に戻り、リヤサスの室内側カバーを引っ剥がして、ダンパー上部取り付け部を点検すると、案の定取り付けナットが緩んでいた…。
で、これを直している内に練習会は時間切れとなってしまい、消化不良のまま帰路に就くことになったのだった。
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その後、ほとんど街乗りオンリーで淡々と乗り続けていたのだが、ある時また、オイルが減り始めているのに気が付いた。「おいおい、またか」と思って再びいすゞのデーィラーに持ち込んだら、やっぱり前回と同じ「オイルラインの詰まりによるオイル溢れ」だった…。もしかしたら、このエンジンの持病なのかも?
ということで、この件でジェミニに嫌気がさし、別の車を探し始めることになったのだが…。
(続く) (前回)
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