BFMRファミリアに駆逐され戦闘力を失ったAE86に見切りをつけて選んだのが、中古の三菱コルディア4WD GTターボだった。本当はBFMRファミリアが欲しかったのだが、新車は高くて手が出ず、中古もまだほとんど出回っていなかったため、発売当時からあんまり人気が無くて値段も安かったこの車を選んだ。
シングルカムの1800cc 4G62ターボエンジン搭載で、最高出力は135ps(当時はグロス表示だった)、車重は豪華仕様のGSRターボより軽い1130kgだったと記憶している。
これまたデジカメも無かった時代なので、車の画像は残っていない。
この車に、バネとトキコ(だったと思う)のダンパーを組み、ガード類を装着するなどして、ダートラ用に仕上げていった。(地区戦やジュニアシリーズはロールバーの装着義務は無かった)
この最低限仕様のコルディアで、早速林道や河原を走り回ったのだが、当初想像していた以上に乗りやすい車だった。エンジンは6000rpmまでしか回せない(レッドゾーンが6000rpmから始まるからだが、実際はずーっと踏んでいれば6500rpm以上は回った。但し完全なオーバーレブ状態で、バルブサージング音も酷くなったけど)が、ターボなのでとにかくトルクがある。また、リヤデフにはメーカー純正の機械式LSDが装着されており、FR的に走らせることができる車だった。
4WD方式は直結のパートタイム4WDで、センターデフなどという洒落た物は無い代わりに、後輪にもロスなく100%駆動力が伝わるので、ダートや雪道でのトラクションはかなりあった。余談だが、石器人は競技を離れた後も、現在まで様々なセンターデフ方式やスタンバイ方式(センターデフをビスカスやロータリーブレード式カップリングなどで代用する方式)の4WDを乗り継いで来たのだが、こと「トラクション」に限って言えば、今でも直結式パートタイム4WDが費用対効果の点からも最強ではないかと思っている。但し、舗装路での切り返しなどハンドルを多めに回す場面ではタイトコーナーブレーキ現象が顕著に出るため、その点だけはセンターにデフ機構を持つ4WD車には敵わない。それでも、雪上やダートをある程度以上のスピードで走る場合は、常にどこかの車輪が滑っている状態なので、タイトコーナーブレーキ現象は打ち消され、コルディアが操縦性で不利だと感じたことは無かった。
ところで、このコルディアだが独特の変速機構を搭載していた。いわゆる「スーパーシフト」と呼ばれていたものである。主ミッションは4速しかないのだが、副変速装置が付いていて、それぞれの段が「Lo」と「Hi」に切り替えられ、「8速ミッション」として使えるのだ。
これが非常に面白くて、上手く活用すればクロスミッションのように接近したギア比でシフトアップしていくことが可能だった。
石器人が練習中に色々な変速パターンを試して、主に狭いコース用に考えたのが次の変速方法だった。
狭いコース用シフトパターン |
上の図の②2速Hiから③3速Loにシフトする場合だが、主シフトレバーのすぐ右横に副変速レバーが有るので、後ろ側から左手でノブではなくレバーのシャフト部分を2本とも鷲掴みにして、主シフトレバーを絞るような感じで押し上げてやれば一挙動でシフトアップ出来た。
また、図の⑤3速Loから⑥2速Hiにシフトする場合は、前側から左手でノブではなくレバーのシャフト部分を2本とも鷲掴みにして、主シフトレバーを僅かに泳がせる感じで押し下げてやれば、これまた一挙動でシフトダウンが可能だった。
図では3速Hiまでしかシフトアップしていないが、これは当時、札幌市南区にあったダートラ場用に考えたものであり、このコースは狭かったので、上はほぼ3速Hiで間に合うと考えたからだ。86時代によく走った砂川市にある高速コース「オートスポーツランド砂川」は、この車では走らなかったので、高速コース用のパターンは考えなかった。
尚、1速、2速共にHiを使っている理由だが、このコルディアの副変速機のLo側を使うとかなりギヤ比が低くなるので、1速だと殆ど発進専用みたいな感じになってしまい、2速Loでも伸びが無い。タイムロスする要因のひとつとして「加速途中のシフトアップ操作(加速している途中でレブリミットに達してしまいシフトアップすると、僅かな間ではあるが一旦駆動が途切れてしまう)」があるということは実感としてわかっていたので、ある程度スピードが乗る迄は、シフトの回数は少ない方がいい。2速Hiならレブリミットまで回せば、メーター読みで90km/h近くは出たのだから。
そのため伸びのあるHi側を使うことにしたのだが、これが結果的にはつながりの良いギヤ比になった。
さて、このコルディアなのだが、競技に出たのは結局一戦だけだった(台数が集まらず賞典外出走だったのだが、3台出走した中で、C73Aミラージュ4WDターボには負けたが、BFMRには勝ったのを憶えている)。当時、それまで勤めていた職場を辞めて求職活動を始めた為だが、後輪を楽に滑らせて走れる楽しい4WD車だったので、もう少し出場してもよかった気もする。
しばらくして次の職場も決まり、コルディアは自家用車として乗っていたのだが、ある日職場からの帰りの途中で、突然エンジンが止まってしまった。
セルがやけに軽く回るだけで、エンジンはさっぱりかからない。馴染みの修理工場に連絡して引き取って診て貰ったところ、なんとタイミングベルト切れだった。まだ8万kmにも達していなかったのに!
当時、ダートラやラリーを席捲し始めていたE38Aギャランの4G63エンジンのタイミングベルト切れ多発が話題になっていた時期で、三菱独自の「サイレントシャフト」がベルトに負荷を与えるからじゃないのか?と整備関係の知り合いが言っていたが、コルディアの4G62エンジンにもサイレントシャフトは搭載されていたから、その所為で切れたのだろうか?
その後、ベルト切れを修理して再びコルディアに乗ることなった。タイミングベルトが切れると、エンジンによってはピストンヘッドがバルブに当たり、バルブの歪みや曲がりが発生することもあるのだが、整備工場の担当者によれば「そこまでは行っていない」ということだった。しかし、乗っていると明らかにおかしい。エンジンが5000回転強までしか回らなくなったのだ。おまけに、その近辺まで回すと「ジャーン、ジャーン」というサージング音が盛大にする…。やはり、バルブがピストンにある程度干渉してしまったのだろう。
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ということで、回らなくなったエンジンに嫌気がさし、別の車に乗り換えることにしたわけだが…。